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ポスト消費社会のゆくえ [活字中毒のトモ]


ポスト消費社会のゆくえ (文春新書 633)

ポスト消費社会のゆくえ (文春新書 633)

  • 作者: 辻井 喬
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/05
  • メディア: 新書


*読み応え: 80 点
*コストパフォーマンス: 80 点

作家の辻井喬さんと、社会学者の上野千鶴子さんの対談をまとめたもの。

本書を読んではじめて、元セゾングループ代表の堤清二さんが
辻井喬さんという作家の顔をお持ちでいらっしゃったことが分かりました。
上野さんは当初、堤さんに対談を申し込んだようですが
堤さんはこれを拒否、かわりに辻井さんが対談することになったそうです。
・・・て、同一人物じゃん。
対談が始まる前から、堤さんと辻井さんが行ったり来たり。
独り舞台ができそうな忙しさです。

セゾングループの歴史を振り返りながら、
近い将来の「産業社会の終焉」を予測するという、興味深い対談です。
堤さんは戦後すぐの時代から、バブルが崩壊するまで
一貫して実業家として活躍しておられたので
時代の移り変わりの考察が鋭いです。
現在を「ポスト産業社会の入り口に立っている状態」として
これから、欧米経済大国以外の国で、新しい社会形態が生まれるのではないか
という予測を立てていらっしゃいます。
そして、「産業社会が衰退していく時代は暗かったけど
これからは、いい時代になるよ」とおっしゃっていますが
・・・本当かなぁ。

上野千鶴子さんというと、歯に衣着せぬ毒舌家のイメージがあったのですが
辻井さんと対談すると、上野さんの毒舌を
辻井さんが柔らかな語り口で
非常に上手くかわしていらっしゃるのがおもしろかったです。
やっぱり、年の功ですかね。
あとがき(辻井さんが書いています)を読んでみても

「ゲラを読んでみたら、上野さんが突っ込みで僕がボケの役割を
果たしていることが分かった」

と書いておられます。

話が一方的にならずに、本当の「対談」になっていて、
気楽に読めます。
その辺の、対話の技量がさすがだなぁ、と思いました。

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コメント 2

yasu

上野千鶴子の本は数冊読んだことがあるのですが、彼女の語り口は鋭すぎて周りを辟易さえているように感じていました。(もちろん、指摘事態は鋭く理に適ったことも多いのですが) それが、うまく交わされているというのは面白そうですね。

欧米型の、モノを中心とした産業社会が終焉を迎えるのではないかというのは、私自身としては納得ができます。地球環境の悪化が懸念される中、エネルギー大量消費型の産業では今後限界があるではないでしょうか。

21世紀は情報産業の時代だ、と言われますが、これは既にモノが充分行き渡っているという前提になります。先進国は既にその水準に達していますが、発展途上国ではそこまで至っていない国が多く、地球全体としては未達という気がしますね。今後は、従来のもの作り産業はコスト圧縮が進み、発展途上国を相手にした商売になるのかもしれませんね。

以上
by yasu (2008-11-29 16:06) 

うしこ

>yasu さん
コメントありがとうございます。

この本では、辻井さんの言葉の返し方が本当にお見事ですよ。
セゾングループの代表者が、こんなに柔らかな人だったとは、意外でした。

それはそうと、地球全体にモノを行き渡らせようとすると、恐ろしい量のエネルギーが必要ですね。この問題が解決されれば、情報産業の時代になるかもしれませんが、どうも世界は再びきな臭い時代へと突っ走っているような気がして・・・。

by うしこ (2008-11-30 09:30) 

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