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一九八四年 [活字中毒のトモ]


一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: ジョージ・オーウェル
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/07/18
  • メディア: 文庫


村上 春樹さんの 1Q84 を読んだので、こちらも読んでみました。
読んでみて思ったのですが、この 2 冊にどんなつながりがあったのか・・・謎でした。

「一九八四年」の著者、ジョージ・オーウェルさんは、1949 年にこの本を書いたそうです。
35 年先の未来を、どう思ってこんな本を書いたのか・・・。
なんだかとても悲しい本でした。

架空の国オセアニアで暮らすウィンストン・スミスは 39 歳。
オセアニアは長いこと、他国と戦争をしていて、暮らしは厳しくなるばかり。
それに、彼の仕事ときたら、歴史上の事実を「なかったこと」にして
人々に別の記憶を植え付ける記事を書くという、とんでもない詐欺的なものでした。
行動はテレスクリーンを通じて常に見張られていて、
ちょっとでも反社会的な行動を取ろうものなら「反逆者」として拷問を受けます。

どうも、社会主義国は将来このような国になるだろうと
悪い想像をしながら書かれた本と思われます。
悪い想像だったのでしょうけれど、2012 年の今読んでみると
想像はあながち間違ってはいなかったのではないかというか
ロシアがソビエト連邦だった時代には、電話が盗聴されたり、
密告が横行していたようである、という話を聞いていましたので
当時理想ともてはやされていた社会主義も、
行き着くところはこんなとんでもない社会だ、ということを知らしめるために
この本が書かれたのではないかな・・・と思いました。
実際、よく考えられ、よく想像されているというか
配給がだんだん減っていく、暗い社会は、現実の社会主義国を良く表しているように思います。
まぁ、現実の社会主義国に、私は住んだことがないのですが
例外なく密告が盛んだったと、聞いているので
ウィンストンの暮らす暗い街ロンドンが(そう、舞台はロンドンと呼ばれる都市です)、
終わった感じの社会主義国家の街であることは、良く分かりました。

1949 年に、こういうことを予測して書いた、ジョージ・オーウェルさんとは
一体どのような人だったのか・・・と思って Wikipedia の 彼のページ を読んでみたのですが
なんだか、良く分からないままでした。
著者自身は、資産家の出身のようですし、土台はイギリス人ですから
社会主義の行く末なんて、知る由もないでしょうに・・・
当時はこのように、社会主義をこき下ろす話を書くのが流行っていたのでしょうか
それとも、ものすごい緻密な洞察に基づいて、すごく正確な予測をしていたのでしょうか
どちらだったのか、非常に気になりますが、
今となっては、作者が亡くなって 60 年以上経ちます。
真相は、知る由もありません。

なんというか、読んでみたら、統治者のオブライエンも
「アホじゃなかろうか」と思うことばかり言っていて、とてもウィンストンが思うほど
「この人賢い」と信じきることができませんでした。
ウィンストンの方が、よっぽどまともなことを言っているのに
どうしてウィンストンは、オブライエンのことを「頭が良い」と思うのか・・・。
あるいは「頭が良い」というのは、実はそれほど大事なことではないのかもしれません。

いずれにせよ、オブライエンの言う「きれいな模様の中の疵」を
完全に除去できるなんて、本当にありえるわけではないのに
この時代の人は、ありえると思ってオブライエンのような悪魔を誕生させたのでしょうか。
だとすれば相当にアホとしか言いようがないのですが
これが物語であるところが、またあざといというか
社会主義が生まれて間もないときに、こんなことを書いたからといって
信憑性も何も、なかったんじゃないでしょうか。
もし、これが真実だと良くわかっていて、書いたのだとしたら
彼は一体何のために、これを書いたのか・・・。
きっと、本当に社会主義の顛末を予見して書いたわけではないでしょう。
ですが、今読んでみると「この時に、こんなことまでよく予見して書いていたな」
と思うので、不思議な本です。
著者に直接お会いして、どういう観点でこの本を書いたのか
とても質問したくなる本です。
ですが残念なことに、作者は 1950 年(この本が出版されたわずか 1 年後)に亡くなっています。

悲しい本でした。
新年に向けて楽しい気分で過ごした人には、絶対にお薦めしない本です。






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