百瀬、こっちを向いて。

百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)

• 作者: 中田 永一
• 出版社/メーカー: 祥伝社
• 発売日: 2010/08/31
• メディア: 文庫

「吉祥寺の朝日奈くん」の感想を書いた時に、Sanchai さん にお薦めいただいたので
こちらも読んでみました。

相原 ノボルは当時、冴えない高校生。
ですが幼少時に、幼馴染のイケメン宮崎 瞬に命を救われた都合上
彼の無理目な頼みを引き受けることになります。
それは、瞬の浮気相手百瀬 陽と、付き合っているふりをして、
本命の彼女、神林 徹子の目を欺いてほしいという頼みでした。
命の恩人である瞬の頼みを断れるわけもなく、
しぶしぶ百瀬と付き合っているふりを始めたノボルでしたが
だんだん百瀬に本気で惹かれてゆきます。

このお話、近々映画で公開されるようなのですが
読んだ限り、結末がなんとなくぼやけた感じになっています。
どうやってうまいこと、見ごたえのある映画にしたのか、ちょっと興味があります。
公開されたら観てみようかな・・・。

「百瀬、こっちをむいて。」以外にも、お話が 3 つ掲載されています。
・なみうちぎわ
・キャベツ畑に彼の声
・小梅が通る

この中で私は、ブスメイクを施して周りから隠れて生きている美少女、柚木の登場する
「小梅が通る」が好きなのですが
他の 3 つのお話も、すべて、高校生のきゅんきゅんする恋愛話となっています。
しかも、主人公はたいてい冴えない子で、人生の表舞台（特に恋愛関係）から降りて
こっそり目立たないように裏道を歩くタイプの子ですが
思いがけないことから恋が始まって、それに戸惑う様子に
読んでいるこちらがとってもきゅんきゅんします。

冴えない子の恋の相手が、たいてい美男美女で
ギャップがあるのが楽しいのかもしれません。
「小梅が通る」だけは、主人公の方が超絶美少女なのですが
彼女が恋する相手は、クラス一身長が低い男の子です。
通常の映画やドラマなら、美男美女がカップルになるお話が多いのに
この本に出てくる主役はみんな、そうでないところが面白いのかも。
いつも見るものとは違う映像が、頭の中で浮かぶのに
みんな真剣に恋をしています。しかもとてもピュアな恋を。
こういうところにきゅんとくるのだと思います。
そして周りの人たちが、いい人なのが、お話に花を添えています。
主人公はみんな、良い友達や家族に恵まれていて、
自分のことを「冴えない」と思って生きているけれど、
実は愛情たっぷりに育った幸せな人たちなのです。
華やかな暮らしではないけれど、十分に幸せに暮らしていると思いました。
主人公たちをうらやむ読み手は、多いはずです。

女子高生が読んでも、おもしろいと思えるのでは。
とりあえずは、乙一好きの同僚に貸すことになっていますが
返ってきたら、娘にあげるのもいいかもしれないと思いました。

Sanchai さん、この本をお薦めくださり、ありがとうございました。
とても面白かったです。

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