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奴隷のしつけ方 [活字中毒のトモ]


奴隷のしつけ方

奴隷のしつけ方

  • 作者: マルクス シドニウス ファルクス
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 2015/05/28
  • メディア: 単行本


最近分厚い本や内容が難解な本を読んでいるので、なかなか 1 冊読了することができません。
ですが、あせって内容を読み飛ばしてもロクなことがないので、時間をかけて読むしかありません。
さらに今週は、娘がインフルエンザに罹りました。
昨年の冬にも罹っていたのですが・・・やっぱり喘息もちなのが原因かしら。
読書の時間を確保するのがなかなか大変です。

この本は、新聞に広告が出ていて、タイトルがあまりにも衝撃的だったので
つい購入してしまった本です。新聞広告にでかでかと踊る「奴隷のしつけ方」の文字。
この時代になんてタイトルの本を出すんだ・・・
とびっくりして思わず Amazon で注文してしまったのでした。
そして書籍が届いてみると、著者は「マルクス シドニウス ファルクス」であると書かれています。
なんか古典の新装版を買ってしまった・・・?とびくびくしながら読み始めると、そういう本ではなく
古典学研究者のジェリー・トナー教授(この方が本当の著者)が、
架空の人物である古代ローマの貴族「マルクス シドニウス ファルクス」に
奴隷のしつけ方について語ってもらったという、フィクションなのでした。
フィクションとはっても、いろいろな古典を参考文献にして、いかにも本当らしく書いてあります。
古代ローマの時代に暮らしていた人たちが「奴隷」をどのように扱っていたか
また奴隷の身分であった人たちが、どのようなことを考えて日々を暮らしていたかなどが
細かく書いてあります。

読了後の感想ですが、昔の「主人」と「奴隷」の関係って、
会社の雇用者と被雇用者の関係に良く似ていると思いました。
奴隷は主人の言いつけを守って、主人に気に入られるように働かなくてはいけないですが
主人は主人で、決して安くはない投資をして奴隷を手に入れ、
技術を教えたり、最低限の食料を与えたりして、養わなくてはなりません。
現代社会では奴隷はいなくなりましたが、結局会社に雇われて
会社のため、最終的にはお客様のために、働かなくてはならないのです。
身分が変わっただけで、やってることはまったく同じ・・・同じすぎて愕然としました。

また「奴隷」が「奴隷」と呼ばれることについて
「昔は “奴隷” という身分なんてなかったのでは?
"noble(気高い)" が人の振る舞いに対して使われていた言葉であったのに
後に貴族をさす呼称となったのと同じように
品性の卑しい人の振る舞いに対して使われていた言葉が、
長い間かけて、身分を表す言葉になってしまっただけ」
と言っていたのが興味深かったです。
そして奴隷は「奴隷」であることが本当に嫌であったようで、
なんとかして自由人になろうともがき、自由を手に入れた暁には
さらに出世街道を上り詰めようと、なりふり構わず下品な手を使うと書いてありました。
この行動、成金と似ています。
ここまで書いてから、本の帯を見たところ
「古代の大帝国を支えた奴隷越しに、我々の生きる現代社会が見えてくる」
と書いてありました。やっぱりそうですよね。ローマの社会は現代社会とさして変わらず
今も昔も、多くの人が労働に縛られていて、一握りに人だけに富が集中しています。
もしかしてトナー教授、こういう感想を誘導するように書籍を書き上げていたりしますかね?

250 ページある本で、字もあまり大きくないので、読了に時間がかかりますが
翻訳が大変すばらしく、原文が頭にちらつくことなく、純粋に日本語で考えて楽しめます。


奴隷のしつけ方

奴隷のしつけ方

  • 作者: マルクス シドニウス ファルクス
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 2015/05/28
  • メディア: 単行本



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