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首里の馬 [活字中毒のトモ]


首里の馬

首里の馬

  • 作者: 高山羽根子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/07/27
  • メディア: Kindle版


沖縄が舞台だということで読んでみたのですが
「首里の馬」というよりは「牧港の馬」のほうが正しい気がしました。
「牧港の馬」では、タイトル的にアレですかね。アレでしょうね、たぶん。

沖縄の古びた郷土資料館で、
中学生の頃から資料の整理を手伝っている未名子が主人公です。
彼女の本職はオペレーターですが、ちょっと変わった仕事で
世界の果ての遠く隔たった場所にいるひとたちに、
オンライン通話でクイズを出題する仕事です。
淡々と仕事場と資料館と家を行ったり来たりする毎日。
そんなある日、台風が来たときに、幻の宮古馬が庭に迷いこんできました。

色々と違和感のあるお話でした。
フィクションなんてこんなものでしょうか。
まず思ったのは、クイズに答える人たちが宇宙空間や南極の深海や
戦争地のシェルターにいるのであれば、通信用のマシンは旧型ではなく
最新式の方が絶対に良いのでは、ということです。
なんでわざわざ、OS も怪しげな古いマシンを使うのかが分からないです。
こういうの、突っ込んだらいけないんですよね。フィクションですから。

あと未名子さんが最終的に仕事を辞めてしまうのは何故なのかも分かりませんでした。
一軒家を維持していかないといけないのに、仕事を辞めてしまったら困るのでは?
実際、コールセンターでリストラにあってからクイズのオペレーターの仕事に就くまで
けっこう職探しに苦労されたようなのに。辞めてしまって本当に良かったの?
ま、フィクションですからね。なんとかなるんですよね。

色々と違和感を覚えながら読み進むと
未名子さんの生きづらさだけが延々と伝わってくるお話でした。
周りの人が「ちょっと変わっているもの」に対してとても無礼なのです。
こんな環境では、生きていくのは難しいなと思います。
だけど、普通の環境ってこんなものかなとも思いました。
周りの人は、「普通」の枠から出てしまった人や物に対して、直接何か言わなくても
なかったことにしたい意思が透けて見えるような行動をとります。
何も悪いことはしていないのに
社会に受け入れてもらえない、ちょっとだけ変わった人の、悲しみがつまった本でした。
世の中で普通に暮らす人たちと、彼らに受け入れてもらえない
ちょっとだけ変わった人たち。お互いに相容れないのだと思います。
普通の人たちが悪いわけでも、変わった人たちが悪いわけでもない。
「自分とは何か違う人」がいたら警戒してしまう、そういうもんですよね。
動物の本能だと思います。いきなり人を刺しに来るかもしれない雰囲気の人を
「変な人」認定しなかったら、命にかかわるので
「変な人だな」と思うのは、もう本能ということで仕方ないですが
願わくばその勘が鋭く的確であればいいのに
そうすれば、他人に害を与えず静かに暮らす人を、不快な思いにさせずに済むのに。
これができる社会だったなら、作者が心に沈んだ複雑な悲しみを
こんなふうに本にしなくても済むのにな、と思った 1 冊でした。



首里の馬

首里の馬

  • 作者: 高山羽根子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/07/27
  • メディア: Kindle版



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