ラストエンペラー習近平 [活字中毒のトモ]
ルトワックさんの新刊が出ているなら、それは読まねば。
本書を翻訳・編集された奥山 真司さんが、2019 年から 2021 年にかけて、
直接またはオンラインで行った、ルトワックさんへのインタビューや講演録などを
訳してまとめたものだそうです。
本書の刺激的なタイトルは、そのインタビューの際に、
ルトワック氏本人が熱心に提案したものだとか。相変わらず過激なじいさんですね。
内容は「中国4.0 暴発する中華帝国」の続編のようなもので
前回は、中国 4.0 ではどのような戦略がとられるのか明らかにされていなかったところが
今回明らかになり、ルトワックさんは「習近平ダメダメ」とこき下ろしています。
習近平は今回「も」政策を誤った、バカなの?と。
中国の指導者層には高度な教育を受けた知的水準の高い人たちがとても多いのに、
なぜ戦略をいつも間違うのか。ルトワックさんいわく、
「それは『シーパワー』すなわち海軍力と『マリタイムパワー』つまり海洋力の違いが
理解できていないから」だそうです。
海軍力とは、艦船の数やそのスペック(性能)、
乗組員の能力や指揮、統制のとれた運用などで決まる、
つまりは、その国家がどれくらい海軍に投資できるかによっており、
言い換えれば、その国の内部で完結できる話で、
強大さを増すほど、周辺国に恐怖を与えるのだと。
それに対して「海洋力」とは、海軍力の上位にある概念で
それは自国だけではなく、他の国との関係性で決まります。
友好国との軍事、外交、経済、文化など総合的な結びつきの強さに基づくものであり
そうした関係からは、有形無形の支援や協力がもたらされると。
中国は海軍力をつけた分だけ、海洋力を失っていった。
今や中国の周りには敵だらけで、勝ち目はないとのことです。
また、ドローンと AI が、今後の戦争を変えるという指摘も興味深かったです。
「命の値段」が高騰している現代では、無人機の優位は計り知れないので
これからどんどん、戦い方が変化すると。
じいさんになっても、モノの見方がとんでもなく戦略的です。
弟子入りしたい。
台湾有事についても詳細に語られていて、
日本政府は中立の姿勢を崩すことなく、
台湾を守るための努力に参加しなければならないと提言されていました。
そりゃそうですよね。アメリカの陰に隠れて何もしない、という選択肢は
もはや取るべきではないし、取れないと。
ルトワックさんは、1942 年ルーマニア生まれなので、
今年で 79 歳です。ぜひこのまま長生きしていただいて、
もうしばらく世界情勢を語っていただきたい。次作も楽しみに待っています。
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