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吉祥寺の朝日奈くん [活字中毒のトモ]


吉祥寺の朝日奈くん (祥伝社文庫)

吉祥寺の朝日奈くん (祥伝社文庫)

  • 作者: 中田 永一
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2012/12/12
  • メディア: 文庫


乙一の作品は 2 度と読まないぞ! と宣言したところ、
会社の同僚がこちらの本を貸してくれました。
乙一さんが別名義で書いた作品だそうです。
乙一が別名義・・・なんのこっちゃいな、と思いながら読んだのですが
あら不思議、全く作風が違っていて、おもしろく読みました。

本書には、次の 5 つのお話が入っています。
・交換日記はじめました!
・ラクガキをめぐる冒険
・三角形はこわさないでおく
・うるさいおなか
・吉祥寺の朝日奈くん

この作品は、平成 21 年に刊行されていますが、
どの作品も、コミュニケーションをとる手段がもどかしくて、イライラします。
交換日記が引越しの積み荷から落ちて別人の手に渡ったり、
学校の机に書かれたラクガキの犯人が数年経ってから分かったり。
ちょっと気をつければ、あっという間に話の核心に迫れそうなのに
そうならずに、登場人物があっちへふらふら、こっちへふらふら
色々な人を巻き込みながら動いていきます。
それを読んでいくと、あっというようなどんでん返しに巻き込まれます。
なんというか、作者は読者の思い込みを織り込み済みで、
作者に手を引かれてそろそろと進んでいくと、途中で落とし穴があって
後ろからぽんと背中を押されるような気になります。

ただこの作品は、乙一さんの作品とは違って、人が死にません。
安心して読める推理小説のようです。
なんとなく、北村 薫さんの円紫シリーズと同じ箱に入る気がしました。
登場人物の何でもないように見える動作一つ一つに、
その後の展開を示唆するヒントが詰まっています。

どのお話も、登場人物の話し方が朴訥としていて、不思議な感じがします。
実際にこんなセリフを話す人はいないんじゃないかと気になるくらい
セリフが棒読みな感じがします。
それもまた、この作品の不思議感を増す効果となっています。

同じ人が書いたとは思えないほど、おもしろい作品でした。
乙一はもうお腹いっぱいですが、中田さんの作品は、続けて読んでみたくなりました。
通勤途中にも気楽に読めます。お薦めです。
S さん、おもしろい本を貸してくれて、どうもありがとう。







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Sanchai

『百瀬、こっちを向いて』もなかなかですよ。
by Sanchai (2014-03-08 18:45) 

うしこ

>Sanchai さん

書籍のご紹介、ありがとうございます。
今度買って読んでみます。
by うしこ (2014-03-08 19:54) 

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