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勝負師の妻―囲碁棋士・藤沢秀行との五十年 [活字中毒のトモ]

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*読み応え  90点
*コストパフォーマンス  70点

囲碁棋士、藤沢秀行さんの妻、モトさんの著書です。

秀行さんの著書 野垂れ死に を読んだときに
こんなとんでもない男の妻ってどんな人なんだろう?と興味を持ったので読んでみました。
う~ん、世の中にはいろんな人がいるもんですねえ。

秀行さんなんかは、
「俺は母ちゃんの手のひらで転がされている」
みたいな言い方をされてますが、私が読んだ感想としては、
奥さんは「ダンナを手のひらで転がしている」のではなく
「何があっても動じないでいようという気構えを持った人であるだけ」
なのでは?

モトさんは新潟の農家に生まれています。
実家はお母様が跡取りで、お父様は入り婿だったそうです。
ところが、お父様は軍人として戦地に赴き、お母様は生来病弱ということで
家にはだれも農業や家事を担う人がいませんでした。
仕方なく、モトさんは幼いころから農作業に明け暮れ、
自分で炊事洗濯をし、兄弟の世話をしたそうです。

その後、あまたある農家からの縁談を断って、東京にやってきた彼女は
叔母さんの家に住み込みながら裁縫を習います。
その当時、銭湯帰りのモトさんを道端で見初めたのが秀行さんだそうです。

モトさんの場合

1.農家に産まれ
2.子供の世話を半分放棄したような親の元で育った

という事実は選択の余地がありません。

ですが

3.農業だけはやるまいと心に決めて上京
4.職業が囲碁棋士である男性と結婚

は、彼女が選択したことです。

人は誰でも「もしあの時・・・だったら」
と考えたことがあるのではないでしょうか。

3 と 4 を選択せず、
新潟に残って大きな農家に嫁いだり
東京に出たとしても秀行さん以外の男性と結婚していれば
彼女の人生はだいぶ違ったものになったのではないかなぁ~・・・。

私がモトさんだったら、こんな風に思うでしょう。

でも、モトさんは後ろを振り返らず、ひたすら「今」を乗り切るべく全力で生きておられるようです。
だから、

借金取りが押しかけても
「お金ないんだからしょうがないでしょ」とあしらえる。
(とりあえず、今ないものはしょうがない。
借金取りだって、私を殺したらお金が返ってこないのだから
返さなかったからといって、殺されることはないでしょう。)

夫の愛人が子供を生んでも
「子供に罪はないんだから、認知してあげなさい」と言える。
(将来子どもに財産をとられるかも、とか、今後愛人とトラブルになるかも、とか難しく考えない。
夫に子どもが生まれ、その子どもに罪はない。
とりあえず、今できる最善の方法は認知でしょう。)

夫に離婚を迫られたときも
「離婚してあげますから、家をくださいね」と言える。
(とりあえず、家さえあれば、住む場所には困らない。
後は何とかなるでしょう。)

夫がアル中になっても、がんになっても、
見捨てずに面倒を見て、食事の管理もしてあげられる。
(あら、ダンナは愛人の家にいると思っていたのに帰ってきちゃったのね。
しかも病気じゃない。病人はとりあえず看病しなくちゃね。)

すべては、「今」目の前にある出来事から逃げずに、
向き合って対処していこうという
筋の通った生き方からくるのではないかと思いました。
かっこええ。

私は、夫に億単位の借金(しかも原因は競艇)が発覚したら
人生のリセットボタンを探さずにいられるかしら。


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