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非才! [活字中毒のトモ]


非才!―あなたの子どもを勝者にする成功の科学

非才!―あなたの子どもを勝者にする成功の科学

  • 作者: マシュー サイド
  • 出版社/メーカー: 柏書房
  • 発売日: 2010/05
  • メディア: 単行本


イギリスの卓球代表選手として 2 度のオリンピックに出場した
マシュー・サイド氏の著書。
原題が「Bounce: Mozart, Federer, Picasso, Beckham, and the Science of Success」であるのは
彼が卓球選手だったからでしょうか?

さて、イギリス屈指の卓球選手であり、かつオックスフォード大学を首席で卒業したサイド氏、
この経歴だけ見ると、
「わーすごい。才能ある人はやっぱなんでもできんねんなあ」
くらいの印象しか持たないものですが、ところがどっこい。
この本で、サイド氏は面白い自論を展開していらっしゃいます。

サイド氏: 「あほか。才能だけとちゃうわ。
ここまでくるのに、どんだけ練習が必要やったか、
お前知らんから "才能" とかテキトーなことが言えんねん」

というのが、大まかな本書の主旨です。
本当にいいのか?こんなテキトーな説明で・・・。ダメよね。

サイド氏いわく、人間一人一人の能力には、もともとさしたる個体差がないそうです。
ある種の技能が、プロと呼ばれるレベルに達する人というのは、
生涯にわたり技能を改善しようと意図的に努力してきた「こだわりの人」であると言います。
そして、彼自身がどのようにして卓球の腕を磨いていったのかを
分かりやすく説明してくれています。
身近に存在したライバルや、良き師との出会いを経て
膨大な練習をつんだからこそ、オリンピックに出場できるような優れた卓球選手になれたのだと
彼は言います。
そして、卓球だけに限らず、どんな種目に置いても、その法則は当てはまると。
つまり、モーツァルトだろうがフェデラーだろうが、
ピカソでもベッカムでも、
才能があったからスーパースターになれたのではなくて
みんなが知らないときからものすごい量の練習をつんだからこそ
全世界を驚かせるような技を披露できたのだ。
練習をつめば、誰だって同じようなことができる。
決して、遺伝子が優れているから、優れた選手になるわけではないんだよ、と。

本当かなあ?
チェスあたりで、自分で実験してみようかしら。
あ、でも超人の域に達するには、練習を苦とも思わずに
のめりこむことが大事であるような・・・。
そうじゃないと、練習は長く続かないと書いてあったような・・・。
よっぽど意志が強く、興味が長く続かないと、難しいでしょうね。
(すでにあきらめモード)

本書は 3 部から構成されており、
第 1 部では「才能なんて幻想だよ。みんな実はすごく練習しているよ」
という説明がまとめられており
第 2 部ではプロのスポーツ選手が「ここ一番」というときに実力以上の力を発揮できる
「プラシーボ効果」について考察されています。
そして、第 3 部では、人間の知覚についての考察や
スポーツにおけるドーピングの是非、
黒人が遺伝子的にスポーツに優れているという一般論が
いかに馬鹿げているかなどが、きちんと論理立てて説明されています。

優秀な人は才能だけに頼っているのではない、という論も新鮮でしたが
ドーピングが知能や寿命を延ばすために使用されるとしたら
これほどまでに禁止されるだろうか?という疑問の提起にはびっくりさせられました。
今、並行して、マイケル・サンデル教授の
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
を読んでいるところだったので、新しい「正義」が提起されたような気分になりました。

今までとは異なる価値観を提示してくれる、面白い本です。



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Sanchai

こんにちは。ご紹介ありがとうございました。いずれ読んでみたいと思います。
by Sanchai (2011-01-21 06:58) 

うしこ

>Sanchai さん

ご来訪ありがとうございます。

是非お読みいただいて、感想を書いていただけるとうれしいです。
私など、やっぱり「黒人アスリートは強い」と思い込んでいた人間でしたので、本当に目からウロコでした。
by うしこ (2011-01-22 00:24) 

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