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わかりあえないことから [活字中毒のトモ]


わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書 2177)

わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書 2177)

  • 作者: 平田 オリザ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/10/18
  • メディア: 新書


最近、実家から意味不明な電話がかかることが多くなってきました。
例えば義母。「携帯電話の防犯ブザーが鳴り止まないのだけれど、どうしたらいいかしら?」
知らんがな、嫁じゃなくて携帯電話会社に電話をかけて聞かんかい!
そして父。「Word に表示される変なスペース記号を消したいんやけど・・・」
娘に電話する前に、ネットで検索くらいせんかいな。編集記号を非表示にするんだよ・・・。
まあ万事がこんな感じで、面倒なこと極まりないのです。
そんなときに、読書ブロガー Sanchai さんのブログで、こんな記事 を読みました。
子供さんが外出先から、分からないことがあると電話してくるエピソードを読んで
・・・この老人バージョンが、我が家で起こっている出来事では!?と興味を持ち
紹介されていた本も読んでみることにしました。

著者は「青年団」という劇団を運営されている、平田 オリザさん です。
世の中的に、コミュニケーションの大切さが叫ばれて久しいですが、
世間の求める「コミュニケーション能力」はいったい何なのか?という視点で
講談社の PR 誌「本」に連載として書いておられた記事をまとめた作品が本書であるようです。
1 章ごとに完結している作品として読まないと、混乱します。
1 冊にまとめて、なにか大きな結論を導き出すといった類の本ではありません。
ですので、タイトルの「わかりあえないことから」に関連しているのは、第 8 章のみ
と思ったほうが、分かりやすいです。

本書の構成は以下のとおりです。
第 1 章: コミュニケーション能力とは何か?
第 2 章: 喋らないという表現
第 3 章: ランダムをプログラミングする
第 4 章: 冗長率を操作する
第 5 章: 「対話」の言葉を作る
第 6 章: コンテクストの「ずれ」
第 7 章: コミュニケーションデザインという視点
第 8 章: 協調性から社交性へ

そもそも人間、コミュニケートすれば「わかりあえる」と思い込んでいることが間違いで
わかりあえない人たちが、どうにかして共有できる部分を見つけて、
それを広げていくことぐらいしかできないのではないか、
そして、そういった歩みよりは、協調性よりも社交性が発揮される行動ですよね。
という意見が「わかりあえないことから」というタイトルにつながるようです。

全体的に、コミュニケーションが取れないことに対して優しい本です。
今職場で流行っている「作業の標準化」につながるような話だと思いました。
「若い人たちは、コミュニケーション能力が低いんじゃない、
しゃべる必要がないからしゃべらないだけだ」というようなご意見が書かれていまして
昔は単純に、コミュニケーションをとりたい人たちの視点での
「今の若い人たちはコミュニケーション能力が低いなぁ」という声ばかりが取り上げられていましたが
この本では「しゃべる必要がないのに、コミュニケーション能力っているか?」という意見が
出てきています。使うエネルギーが少ないほうへと、表現方法がどんどん変化している
ように感じました。そのうちコミュニケートしないことが「標準」になって
コミュニケーション能力が高いと今言われている人たちは
「余分なことをいろいろとしゃべる人たちだ。要点をまとめて簡潔に話せないのかな?」
みたいな低評価を受けることになるかも・・・?そんなことになったら、それはまたそれで
居心地の悪い世の中になりそうです。

Sanchai さん、興味深い本をご紹介くださり、ありがとうございました。


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