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終点のあの子 [活字中毒のトモ]


終点のあの子 (文春文庫)

終点のあの子 (文春文庫)

  • 作者: 柚木 麻子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/04/10
  • メディア: 文庫


ランチのアッコちゃん」が面白い作品だったので、
柚木 麻子さんの作品を他にも読みたいと思いました。
この作品の Kindle 版を買って、Nexus7 に入れていたのですが、
ちょっと読んでみたところ「ランチのアッコちゃん」とはまったく作風が違っていて
入り込むのに少し時間がかかりました。ですが、4 つのお話のうち
「フォーゲットミー、ノットブルー」を読み終わるころには、お話の世界にどんどん引き込まれて
登場人物に感情移入するようになりました。

本書は、4 つのお話で構成されています。
・フォーゲットミー、ノットブルー
・甘夏
・ふたりでいるのに無言で読書
・オイスターベイビー

どのお話も、人とかかわるのが苦手で、他人を見下す癖がついている奥沢 朱里と
彼女を取り巻く人たちのお話です。

心温まるお話ではまったくなく、複雑な人間関係に
いろいろな人が傷ついたり、あきらめたりしながら、必死に自分を守っています。
朱里だって、他人を見下してはいるけれど、そうしないと自分の事を守れないほど
とてもとても弱い女の子なのです。
なのに、人間関係は人が表面に出しているところだけで進んでいきますよね。
裏まで読め、というのは無理な話ですし、そんなの深読みして逆に
事実とはぜんぜん違うことを思い込まれても困るのですが。
みんながみんな、そのバランスにとても苦しみながら、人間関係を築いている。
だから朱里にむかって「空気読め」と怒るわけです。

みんなが朱里に「空気読め」と怒りますが、彼らだって本当に上手に
「空気を読めている」とは言えないかもしれません。
それどころか、読みは完全に外れていて、いろいろな人を傷つけているかもしれない。
みんな、そこのところも良く分かっているから、余計にいらいらするのかも。
自分はできないなりに、必死で苦労しているのに、どうしてあなたはその苦労をしないのか?
そんな思いがあるのかもしれません。そんなの人それぞれなのにね。

お話に引き込まれて、あっという間に読める本ですが、
読んだ後には疲労感が残りました。
朱里は最終的に、人とのぬくもりを求めて自分を変えようとしていきますが
私ならすべてに疲れて山奥へ篭ってしまいそうです。



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