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不実な美女か 貞淑な醜女(ブス)か [活字中毒のトモ]


不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)

  • 作者: 米原 万里
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1997/12
  • メディア: 文庫



*読み応え  90点
*コストパフォーマンス  100点

日本屈指のロシア語同時通訳者だった、故米原 万里さんの著書。
タイトルの、「不実な美女か 貞淑な醜女(ブス)か」というのは
通訳や翻訳の際、元の言語から出来上がった訳が
原文に忠実だが言葉としてどこかおかしい場合を「貞淑な醜女(ブス)」
原文に必ずしも忠実とはいえないが、美しい言葉に仕上がっている場合を「不実な美女」
になぞらえた、通訳者や翻訳者であれば誰しも苦笑いしてしまう名文です。

いやもちろん、訳ですから「貞淑な美女」に仕上がるのが一番いいのは分かっているのですが
訳者の技量や、クライアントの要望、限られた時間などが複雑に絡まっていくと
毎回「貞淑な美女」を納品できる確率は恐ろしく低くなります。
やってみれば、すぐ分かりますよ。大変なんだから。

米原さんは通訳者ということで、通訳の舞台裏がたくさん紹介されています。
「こんな失敗やっちゃった」とか
「ここであの通訳者さんはこんな風にして場を切り抜けた」
という逸話がたっぷり詰まった、ある意味読んでいるこっちが、ハラハラドキドキしてしまう本です。
読みながら「うわ~、こんな場面に出くわさない職業で本当に良かったわ~」と何度思ったか。
私の携わっていた翻訳は、ある程度頭で考える時間があるので、瞬時に的確な訳を出さなくても
しっかり確実に情報を伝えればいいので、通訳とは全然技術が違います。

ですが、「それでもやっぱり通訳は辞められない」という、米原さんの気持ちも痛いほど分かりました。
大変なんだけど、おもしろいんですよ、このテの仕事。
これ 1 本で食べていける人が本当に羨ましいです。





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