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それをお金で買いますか? [活字中毒のトモ]


それをお金で買いますか――市場主義の限界

それをお金で買いますか――市場主義の限界

  • 作者: マイケル・サンデル
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/05/16
  • メディア: ハードカバー


『これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学』 が有名な、
マイケル・サンデル教授の著書です。
沖縄タイムスのコラムに、この本の話が載っていたので
興味を惹かれて買ってみました。

なんでも売り物にされる社会は、人類にとって本当に住みよい社会なのかという問いを
投げかけている本です。
『これからの「正義」の話をしよう』 と同じように
大学で市場と道徳の関係を扱うクラスを教えながら、このテーマを研究されているようです。
このクラスの内容も YouTube で流れていたりしないか・・・と思って探してみましたが
無料の世界はそこまで甘くないようです。
このテーマを扱った数分のスピーチは見ることが出来ましたが
講義はさすがに見れませんでした。
彼の講義を聴きに行きたいと思ったら、ハーバード大学へ行かないといけません。

なんでもお金で買える「市場勝利主義」の時代は、本当に幸せな時代なのか。
行列に割り込む権利、医者の予約などをお金で買う行為は、道徳的に正しいのか。
それらの行為は、お金で権利を買った人や売った人の人格を貶めることになっていないか。
市場価値に押しのけられてしまいがちな「大切にすべき価値」について
もっと良く考えた方がいいのではないか、というのが本書のテーマです。

私は資本主義の世の中に生まれて、数十年その社会の中で生きてきたからか
割と「売る人と買う人が困っていなければ、いいんじゃない?」という考え方をします。
例えば、こんなふうに自分の初体験を売りに出す人についても、
まあ、当人が望んだことなら、いいんじゃないかと。

ですがその考え方は、道徳的にマズイ可能性があるってことですね。
最近話題になっていた、教師の駆け込み退職だって
退職金が多くもらえるときに辞めるのは、生活を考えたら仕方ないじゃないか
自分がその立場にあったとして、果たして駆け込み退職をしないで職務を全うするか
自信がないと思いました。
今の世の中、ある程度お金は必要だよ、と。
ですがこれが大々的にニュースになったということは、
この行為は道徳的に問題なのだと思われます。

最初から「この行為は道徳的に正しい」という行為が決まっていて
ずっと変わらないでいるなら、問題提起する必要はないのです。
だんだん「お金を払えば何をしてもいいじゃないか」という方向に流れていっているのが
問題なんですよね。
何をしてもいいじゃないか、の方向に変化を促す方が
道徳的にマズイからしてはダメ、の方向よりもはるかに簡単だと思います。
だからこそサンデル教授も、この問題についてずっと研究を続けていらっしゃる。

しかし最近は、フリー(無料)のサービスと戦って、いかにお金を生み出すか
という行為に必死にならないと、生活できない時代になっていますから
そういう時代背景からも、
「道徳的にマズイからダメ」を考えるのは難しくなっていると思いました。
難しいからって、考えるのをやめてはいけないんですけど。

お金をたくさん持っていると、「お金を払えばなにをしてもいいでしょ」となるし
お金がないと、お金のために自分を貶めざるを得ないことになる。
どちらも不幸です。
少し、お金から離れた生活を送る方法を考えた方がよいかもしれません。


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