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ぼくは勉強ができない [活字中毒のトモ]


ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

  • 作者: 山田 詠美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1996/03/01
  • メディア: 文庫


娘の図書館からのまた貸しシリーズです。
山田 詠美さんの作品を読むのは本当に久しぶりで、大学生の時以来だったような。

主人公の時田 秀実は高校生。
あばずれ 恋多き女である母親と、その父であるお爺ちゃんと
一緒に暮らしています。
世の中的には「普通の家とはちょっと違う」というラベルを貼られてしまう家なので
おおらかな祖父と母に育てられ、ちょっと貧乏だけれど何不自由なく育ってきた秀実は
世間が「ほら、あそこの家はお父さんがいないから」と陰でいうのを聞くたびに
複雑な気分になるのでした。

普通の家庭ってどんな家庭?その条件をクリアできないと、不幸なのか?
世間がいとも簡単に「かわいそうね」とか「こんなこと非常識だ」と言うたびに
秀実の心は揺れ動きます。本当にかわいそう?非常識って、誰にとって??

そんなことを考え続けている秀実なので、ワイドショーについても
面白い解釈をしてくれます。私はこの解釈がとても好きなのですが
何故多くの主婦はワイドショーに夢中になるのか?という疑問に対して
「ここに取り上げられる話題が、すべて本当は自分の価値観でどうにでもなることだから。
けれど、自分の確固たる価値観を持つのは難しいことなので
多くの人は、それが本当に正しいものなのか、不安に思う。
そんな時にワイドショーで、人の死とか不倫に対し、他人の言葉が与えられると
ある種の道筋を与えられ、安心できる」
という結論に至っていました。
ここまできっぱり書かれてしまうと、もうなにが「常識」なんだか分かりません。
この結論には、「普通とは違う」と言われる側も含まれていますよね?
だから、何を言われても私は私、と割り切って楽しく暮らしている人はたくさんいるし
道筋が分からなくて不安な人も、またたくさんいる。そういうことなんだと思いました。

本書の「番外編 眠れる分度器」は、
大学入試センター試験の国語の問題文になったことがあるようです。
こんな解釈の難しい文章、よく問題にしましたね。
それこそ、人によっていろいろな解釈が出てくる文章だと思います。
自分の中の「普通」が何なのか、よく分かるお話だと思うのですが
試験中にそんなことに気づいても、重いしね・・・。
Wikipedia で山田 詠美さんのページを読んでみると、
この問題の正答率は低かったそうです。
どんな問題だったんだろう・・・と思って調べてみたのですが、
1995 年まで過去問を掲載している 東進ハイスクールのデータベース にも
なぜか 1999 年の「国語Ⅰ・Ⅱ」は載っていませんでした。
どうしてこの年だけ載っていないのかしら・・・。不思議ですね。




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