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青いお皿の特別料理 [活字中毒のトモ]


青いお皿の特別料理

青いお皿の特別料理

  • 作者: 川本 三郎
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 単行本


発言小町の こちらのトピ を読んだところ、この本が紹介されていました。
件のトピではトピ主は、実母の手料理がいかにまずかったかを自嘲気味に
そして作ってくれたことに感謝もしながら語っています。
このトピ主にレスを返した見知らぬ人は、いったいどんなお話を薦めたんだろう?
ちょっと気になったので、古本を購入して読んでみました。

17 つの短編小説がまとめられた本です。
なにか食べもの、飲みものが入っていれば、あとは自由、という極めてゆるい制約で
「男の食彩」という雑誌に掲載されていた小説だそうです。
短編小説で、どれも全く別の主人公が登場する、別のお話なのですが
よくよく読むとちゃんとつながっていて、主人公の隣人が、前回の小説の主役だったり
ふと道を尋ねられた人が主役のお話があると、次回は尋ねた人が主役だったりします。
面白くなって、読みながら、紙に相関図を書いてみたりしました。

料理の下手なお母さんは「水田のパラソル」に初めて出てきます。
ですが「水田のパラソル」では、このお母さんの料理がそれほどひどいことは分かりません。
問題のお話は「モヤシのひげ根」というタイトルです。
ツアーコンダクターとして働く娘が回想する、彼女の誕生日会の恐ろしいことといったら。
緑色の「青梅のケーキ」なんて出されたら、死ぬまで忘れないと思います。

作者の川本さんは、世の中には料理が恐ろしく下手な人も存在する
ということをよくご存知だったのでしょうか。
先ほどリンクを張った 小町のトピ には、「モヤシのひげ根」に出てくる香枝子さんの
お母様みたいな母がたくさん登場しています。
母といえば、実母と義母くらいしか身近にいない私は、幸せなことに
ご飯で苦労したことがありません。
母は、料理が好きな人ではありませんが、食べるものにお金を惜しまない人で
常においしい食材を手に入れてくる人です。
義母は、とても料理上手で、人に料理をふるまうのが大好きな人です。
この人たちに囲まれてご飯を食べるのは、とても幸せなことだったんですね。
たまに「自分で食べたい時に食べたいものを食べたい」と思ってしまう私は
とても贅沢もののようです。

それはさておき、どのお話も淡々と進んでいきますが、不思議とどんどんページをめくりたくなります。
何気ない日常のシーンが、別の登場人物に与える影響が見れて、とても興味をそそられます。
あれ、この人前も出てきたよね?と何度も思いながら、短期間で読み終わりました。

タイトルの「青いお皿の特別料理」とは英語の "Blue Plate Special" であり
アメリカの大衆食堂で良く出る「本日の定食」のことなんだそうです。
タイトルの通り、出てくる料理は、ひげ根を取ったモヤシと豚バラ肉を蒸したものであったり
ホッケであったり、焼き鳥であったり、どこにでもありそうな料理ばかりです。
料理が出ていることを、忘れてしまいそうになります。
それに比べると「青梅のケーキ」はやはりインパクト抜群です・・・食べたいとは思いませんが。
そう、食べたくなるのはやっぱり、ホッケや焼き鳥で
もちろん熱燗も一緒に頼みたくなる、そんな本です。
どのお話も、その後主人公が幸せになるような予感がして、
読んでいるこちらも幸せな気分になれます。




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