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なぜ時代劇は滅びるのか [活字中毒のトモ]


なぜ時代劇は滅びるのか (新潮新書)

なぜ時代劇は滅びるのか (新潮新書)

  • 作者: 春日太一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/09/16
  • メディア: 新書


タカシの外資系物語」でタカシさんが薦めていらした本です。
タカシさんが、そこまで薦めるのであれば、読んでみようか
と軽い気持ちで購入したのですが、読み終えてみると、何とも後味悪いというか
「結局この人、何が言いたいんだろう?」と思いました。

著者の春日 太一さんは、時代劇・映画史研究家だそうです。
研究家と言ってしまうと響きがいいですが、なんとなくヲタ的雰囲気が漂っています。
春日さんいわく、時代劇は歌舞伎や狂言と肩を並べるような
伝統芸能に近いもので、現代風にアレンジしたり、
時代劇の身体の動かし方を理解していない人が演じるには、無理があるんだそうです。
その一方、時代劇はある意味「ファンタジー」なので
あんまり史実に忠実である必要もなく、現代とはちょっと違った人々の暮らしぶりを
楽しめればそれでいいのだとも言っています。
あまりムキになって「実際は違ったのに!」「こんなしゃべり方はしなかったのに!」
とか考えずに、もっと気楽に今とは違う時代のお話を楽しむ人が増えれば
時代劇はすたれずに済むかもしれないそうです。
ところが、映像の中心が映画からテレビに移るにつれて
作る側もだんだんと、視聴者とスポンサーのことしか考えないようになり
役者や監督を育てることを放棄してしまったのだそうです。
それが 1965 年ごろだと言います。今から 50 年近く前に
時代劇は人材育成を捨てていたんですね。今の日本の社会は
それと全く同じ道を歩んでいましたから、時代劇って時代の先端を行っているんですね。
(書いていて、むなしいですが)

ファンタジーを楽しめばいい、と言っておきながら、
時代劇の役者はこうあるべき!という型があるそうで
そうであるならば、その「型」が好きでない人は、
時代劇を見ようとは思わないだろうな・・・というのが私の率直な感想です。
知らない人に嫁ぐ、そして生涯子供を生める保証がないというときに
「それで殿のお役に立てるなら」なんて、私は口が裂けても言えそうにありません。
それよりは「自分の意志で嫁に行くわい」と言う方が好きです。
現にそう言って結婚しましたし。
時代劇というファンタジーに出てくる女性は、たくましくないほうがいい、というのであれば
時代劇に登場する女性に感情移入することはないと言い切っていいので
私はこの先時代劇のファンになれそうもありません。

前出の「タカシの外資系物語」では
タカシさんのアメリカ人同僚は「アメリカ人は西部劇をリスペクトしているから
確かに人気に陰りは見られても、時代劇ほどの凋落ぶりは見られない」
と言っているそうですが、本当にそうでしょうか。
西部劇に出てくる女性も、古い作品では添え物みたいなイメージで
私は好きになれません。ましてや現代のアメリカ人女性なんて、
私よりはるかに男女平等にうるさい気がします。
時代劇と同じように、遠からずなくなってしまうと思うのですが
そうではないのでしょうか。

とはいえ、人材育成を大事にしないと滅びてしまうことが立証されているのですから
そこはやっぱり問題にすべきで、もっと色々なことを自分でできるような機会を持ったり
後輩を根気強く育てていくようにしないと、と思ったのでした。
会社がそれを許すかどうかは問題になりますが。
(私の勤めている会社は、すぐに「安い海外へ仕事を持っていけばいいじゃん」
という会社です)
手っ取り早く外注したり、今すぐ何でもできる人が来てくれると思いこんだりは
よくないことなんですよね、本当は。



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