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これからの「正義」の話をしよう -- いまを生き延びるための哲学 [活字中毒のトモ]


これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

  • 作者: マイケル・サンデル
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/05/22
  • メディア: 単行本


ハーバード大学で、"Justice"(正義)に関する政治哲学の講義を展開している
マイケル・サンデル教授の著書。
日本で発売されてからわずか 4 ヶ月の間に 67 版が発行されている
大ベストセラーです。
私たちが何となく持っている「正義」の価値観について、
じっくり考えるいい機会になる本です。

彼の「正義」の講義は、こんな質問から始まるらしいです。

あなたがトレーラーの運転手だったとして。
運転するトレーラーのブレーキがいきなり利かなくなったら、
あなたはどうしますか?

そのまま進路をまっすぐ進んだ先では、5 人の作業員が線路上で工事の最中です。
このままのスピードで突き進んだ場合、5 人は即死でしょう。
ところが、ラッキーなことに、5 人の手前には線路の分岐点があり
進路とは別の方向に舵を切れば、5 人を救うことができます。
ただし、舵を切った先でも、1 人が作業中であり
その 1 人はあえなくトレーラーに轢かれることになります。

この状況で、あなたなら、どうしますか?

5 人死ぬより 1 人死ぬ方がいいと思って進路を変更するのが正義か?
進路を変更する先にいる 1 人には何の罪もないのだから、
このまま 5 人を轢き殺すのが正義か?

正解ってあるのでしょうか。

その後、イマヌエル・カントの「自由の理念」や「道徳形而上学原論」、
アリストテレスの倫理学や政治学などを読み解きながら
私たちが今「正しい」と感じている倫理は本当に正しいのかどうか
いろいろな目線で調べ上げていきます。
そして、これからの社会をどのように組み立てればより良い社会になるだろうかと
あれこれ考えをめぐらせます。

実はこの本は、サンデル教授がハーバード大学で実際に行っている講義の内容が
書籍化されたものです。
サンデル教授のサイト "Justice with Michael Sandel" から、
彼の 実際の講義の様子 を見ることができます。
是非、映像をご覧になってください。
本を読むよりずっと面白いと思います。
(英語ですが、英語字幕もついているので比較的分かりやすいかと)
私も試しに Episode One を見てみたんですが
大きな講堂で何百人もの生徒を相手にサンデル教授が話す様は壮観です。
私の個人的な感想としては、大きな教室で何百人もの生徒が受講する講義が
ハーバード大学にもあるとは意外でした。
私が日本の大学で受けていた「一般教育」の講義に雰囲気が良く似ています。
こんな講義、アメリカでもあるんですね。
日本の大学の講義と違うのは、サンデル教授の講義がとても楽しいことです。
Episode One は、50 分程度の長さでしたが
聞いている間、一度も他のことに気を取られたりしませんでした。
教授の話術がたくみだし、受講者が意見を述べる機会もたくさんあるので
受講者を飽きさせません。
90 分のうち 85 分を睡眠学習に費やしていた講義とは全然違います。

これからの「正義」は、
同胞が公共生活に持ち込む道徳的・宗教的信念を避けるのではなく
もっと直接的にそれらに注意を向け、真剣に議論することで
新しい道が開かれるだろう、というふうに締めくくられています。
つまりは、これからの「正義」はまだ確定されていないってことでしょうか?
確定してはいないけれど、
今の「正義」だって確実なものではないので、
これからいくらでも変わるし、変えられる余地があると。

なんとなく、拍子抜けな結論である感じもしますが
哲学って、そういうものかも?
日本語で読むのもかなり頭を使う本なので
たっぷり時間があるときに読むか、
逆に時間がないときに数ページずつ読んで、ちょいちょい考えるといいかと思いました。
頭で考えずに行動する派の人にはお奨めしません。

あと、本書を開くと「キクへ、愛を込めて」という文字が飛び込んでくるのですが
奥さんの名前がキクさんなんだそうです。
もしかして、日本人?いやでも、キクさんが日本人だったら
そうとう年な人じゃないかー?
(ちなみに、キクってウチのひいおばあと同じ名前・・・)
いろんな方向に興味が飛び散っていったので、調べてみました。
教授の奥さんは、キク・アダット (Kiku Adatto)という
東京生まれのアメリカ人社会学者でいらっしゃるそうです。
こんな方 です)
東京生まれ・・・なるほど。
アメリカ人のネーミングセンスは理解できませんです。




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コメント 2

株式会社 ブログウォッチャー

突然の御連絡、失礼いたします。
(株)ブログウォッチャー編集部の馬場と申します。

急な御案内で恐縮ですが、
「これからの「正義」の話をしよう-いまを生き延びるための哲学」の書評ブログ記事を株式会社リクルートエージェントの公式コミュニティサイト「BizRavel」http://bizravel.r-agent.co.jp/
に掲載させて頂きたく、御連絡差し上げています。
弊社は株式会社リクルートのグループ会社でして、ブロガー様とのご連絡を代行させて頂いております。また、ブログなどの口コミを活用したwebサイト制作を行っています。

ブログ更新、投稿義務などブロガー様への御負担は一切ございません。
この掲載が貴方殿のブログへの集客口として貢献できれば幸いだと考えております。

詳細について、ご連絡させていただきたいので、bizravel@blogwatcher.co.jp に
2010年12月1日(水)までに
お返事をいただけませんでしょうか。
急なご依頼で本当に申し訳ございませんが、何卒、ご検討の程宜しくお願い致します。

株式会社 ブログウォッチャー
編集部 馬場  bizravel@blogwatcher.co.jp

by 株式会社 ブログウォッチャー (2010-11-29 15:25) 

うしこ

>馬場様

この度は拙ブログへご来訪ありがとうございます。
私の書いた書評などでよろしければ、是非掲載をお願いいたします。

by うしこ (2010-11-30 05:08) 

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