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やさしいバイオテクノロジー [活字中毒のトモ]


やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書)

やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書)

  • 作者: 芦田 嘉之
  • 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
  • 発売日: 2007/01/16
  • メディア: 新書


この春、私の中でホットなのは、遺伝子組換えと原子力です。
どちらもあまり得意な分野ではないため、本を読み終わるのに非常に時間がかかります。

某日、遺伝子組換えについてこんなニュースを耳にしました。

遺伝子組換え植物だと判明しただけで伐採?
これを聞いて、実に不思議なニュースだと思いました。
遺伝子組換えって、そんなに危険な話でしたっけ?
上記のニュースによると、

----------- 抜粋ここから --------------------
遺伝子組み換え植物は、人体や生態系に与える影響が指摘されており、国内で安全性が確認され販売が承認されているのは、ダイズやトウモロコシなど。組み換えパパイアによる健康被害の情報はないが、安全性も確認されていない。
----------- 抜粋ここまで -------------------

となっていますが、何故にパパイアにだけここまで厳しいのかしら?
何か特別な害が報告されたわけでもないのに?
もっと別の理由があるのでは?
・・・と次々に疑問が浮かんできたので、
ちょっと遺伝子組換えに関する本をいくつか読んでみることにしたのでした。
で、まずはとっつきやすい(ように見える)サイエンス・アイ新書から。

ガンの転移・浸潤、植物のストレス応答・防御機構などが専門だという
芦田 嘉之先生の著書です。
本書をざっと読むと、
「遺伝子ってだけで、みんな毛嫌いしすぎなんじゃないの?
そんなに難しいことでも危険なことでもないのよ。
それに、今みんなが毎日食べている野菜だって、
大半が遺伝子組換えによって生まれた植物ですよ?」
って感じで、遺伝子組換え技術におおむね肯定的です。

まず第 1 章では、「ゲノム」と「遺伝子」を中心に
生命の基本的な仕組みが解説されています。
そして第 2 章では、遺伝子組換えの技術が
どのように応用されているのかが、例をたくさん挙げながら説明されています。
たいていの見開きは、左が文章で右には図が書かれていて
図を見ることで、文章の言わんとするところの理解を補えるようになっています。
第 1 章は、専門用語も多く、読むのに苦労しますが
第 2 章まで来ると、例として出されるトピックが身近なものであったり
ゲノムと遺伝子の違いを野球チームにたとえて説明されていたりして
楽しく読めました。

この本は、私が思った以上に色々な面白いことが書いてありました。
まず、生物と生物でないものを分ける話の先に、生と死の境目に関する話が出てきます。
そこで、芦田先生はきっぱりと
「生や死は、法律的には定義してあっても、生物学的には定義がない。
法的に決まりがあったり、新しい決まりが出来るのは
医療行為による合法的な殺人を認めるため」
と言い切っていらっしゃいます。
その辺、養老先生の見解と非常に似ていると思いました。

あと、キャベツやブロッコリーなど、普段食卓に上っている野菜のほとんどが
交配技術などの人為的選択で作られた野菜であることや
植物が自ら身を守るために、天然の毒素を含んでいる話は
非常に興味深く読ませていただきました。

もう一つ参考になったのが、「遺伝子組換え」の表記の話です。
「くみかえ」が「組換え」と表記されるか「組み換え」と表記されるか、
はたまた「組み替え」とされるかによって
使う人や記載内容のレベルが分かるというお話でした。
「遺伝子組換え」は、科学者、専門機関、法律用語で使われることが多く、
一般的に公的的、推進的な意見が多い。
「遺伝子組み換え」は、テレビ、新聞、一部の雑誌、市民運動家の間で使われる。
使い手は、遺伝子組換えに反対する人たちが多い。
「遺伝子組み替え」は一部の市民運動家や素人が使う。
この字を使うのは、組換えについて無知な人たち。
という独自の分類です。
これを読んで、本当かなあ?と思ったんですけど
たまたま読了後にジュンク堂へ行く機会があって、
食の安全に関する本のコーナーを見てみたんですが、
確かに、「組み換え」の表記の本は、遺伝子組換えに反対のようなタイトルが並んでいました。
Amazon.co.jp で検索すると、似たような言葉はすべてひっくるめてヒットしてしまうらしく
「遺伝子組換え」で検索したにもかかわらず
「組み換え」と「組換え」どちらの本もヒットしました。
(見たところ「組み替え」表記の本はヒットしないようです)
ですが見てみると・・・確かに「組換え」の表記の本は、
遺伝子組換えに好意的な学術的な本が多く
「組み換え」の方は、「それでも食べますか?」みたいに恐怖をあおる本が多いです。

この事実で、一気に本書に書かれている内容への信頼度が高まりました。
(単純ですねえ)
遺伝子組換えの知識を得るための第一冊として、お奨めいたします。
でも、遺伝子組換えパパイアが伐採されなくてはいけない理由がますます分からなくなりました。
1 冊だけでは、総合的な理解につながらないので、次、いってみようと思います。
Amazon で何冊かまとめて注文していたので、それを読むのですが
次に読むのは「遺伝子組み換え」表記の本ですよ。
それだけで反対意見なのだということが分かってきました・・・。




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zu2

用語で判るってのはありがちですが、それを説明してる本は貴重ですねえ。面白そう。
by zu2 (2011-05-25 18:07) 

うしこ

>zu2 さん

是非お読みください。理数系に強い zu2 さんなら、もっと楽しみ方の域が広がるかと。
by うしこ (2011-05-26 05:44) 

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