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「君が代少年」を探して [活字中毒のトモ]


「君が代少年」を探して―台湾人と日本語教育 (平凡社新書)

「君が代少年」を探して―台湾人と日本語教育 (平凡社新書)

  • 作者: 村上 政彦
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2002/10
  • メディア: 新書


台湾から程近い沖縄では、けっこう良く見かけるのですが、
明らかに外国(特に中国や台湾)からの観光客と見られる老人が流暢な日本語を操って、
テーマパークのチケットを買ったり、レストランで食事を注文したりしています。
日本語だけ聞くと、本当に滑らかでほとんどなまりがなく
聞くたびにびっくりします。

彼らの話す流暢な日本語が、戦前の日本の侵略の結果であることは明らかで
教育って恐ろしいなと思うのですが
戦後 66 年になろうという今になっても、外国語を自在に操れる台湾人って
いったいどんな教育を受けてそうなったのか、興味を持ちました。
だって私、子どもの頃から十数年英語を勉強しましたが
使わないとすぐに忘れてしまいます。
この違いはいったい何なのか??
良い勉強法があるなら、是非教えていただきたい。
そんな軽い気持ちで本を探してみたところ、本書に行き着きました。

著者の村上 政彦さんは、芥川賞候補として何度も名前を連ねたことがある作家さんです。
だからでしょうか、"「君が代少年」を探して" という、いかついタイトルの新書にもかかわらず
文章がどことなく小説っぽくて、ノンフィクションなのにフィクションのような感覚で読み進みました。

村上さんは最初、朝鮮半島を舞台にした小説を書きたいと思って
資料を集めていたそうです。
そしてその資料の中に、日本統治下の朝鮮で使用されていた教科書を見つけました。
「君が代少年」はその当時の国語(= 日本語)の教科書に登場するお話です。
台湾で実際に起こった大地震で亡くなった現地の少年が
亡くなるときに君が代を口ずさみながら死んでいったという
・・・私に言わせてもらえればシュール以外の何者でもない実話が
教科書の題材になっています。
村上さんはこのお話が実話であるというところに興味を持って
「君が代少年」のルーツを探っていきます。
すると「君が代少年」は当時本当に生きていた少年で
彼の親戚や、当時の友だちや学校の先生が、昔を思い出しながら
彼の人物像と日本統治下の台湾の様子を語ってくれたのでした。

日本が台湾を統治したのは 1895 年から 1945 年の 50 年間ですから
その間に教育を受けた台湾人は国語が日本語だったのです。
ずっと日本語で教育を受け、公用語も日本語だった。
それは日本語も上手になりますね。
長いこと海外で暮らしていた帰国子女と同じようなものかも・・・という感覚を持ちました。
(あくまでも、言語に関してですよ)
そんな彼らですら、インタビューに応えるときには
「もう長いこと日本語を話していないから、忘れてしまって・・・」
などと言っています。
やっぱり言葉は、ずっと使っていないと忘れてしまうものなんだと
納得できました。
帰国子女でもない私が、英語をぱらぱらと忘れてしまうのは当然だわ。

変な動機から読みましたので、感想が本題から離れていますが
日本統治下の台湾の様子が良く分かる本です。
こういった類の本は、学者の先生方が出版されることが多く
値段もそれなりにするのが一般的ですが
この本は新書なので、気軽に買うことが出来ます。
あの時代の台湾に興味を持ったときに手に取る最初の一冊としておススメです。
中高生が読書感想文を書くための題材としても、いいかもしれません。



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