移民の宴：うしこの毒吐き部屋：SSブログ

	ブログをはじめるログイン

移民の宴　[活字中毒のトモ] [編集]

作者: 高野秀行
出版社/メーカー: 講談社
発売日: 2012/11/15
メディア: 単行本（ソフトカバー）

「未来国家ブータン」と一緒に購入した本です。
同じライターさんの作品を、続けて読んでみました。

日本に住む外国人が、普段どのような食事をしているのかを
取材をしてまとめた本です。
タイ、イラン、フィリピン、ロシア、中国、インドなど
色々な国から来日した人たちの食べ物が溢れています。
ブラジルに渡ったウチナーンチュも登場します。

こういう切り口で書かれた本を読んだことがなかったので、新鮮でした。
日本に来た外国人の食生活なんて、何の興味もなかったので。
私は高野さんがここまで「在日外国人の食文化」にのめりこむ理由が全く分かりません。
なに食べていたって、いいじゃないの。
なんなら、沖縄に居候中の我が家の料理も紹介する？（ね、興味ないでしょう？）
自分の経験を振り返るに、食べられるものを食べているだけで
特に「これがないと生きていけない」という食材を取り寄せたりしないですし
沖縄のメニューを内地的にアレンジして出来上がった「食文化のコラボ」的料理を
食べているわけでもありません。
あ、でも、転勤族のなかには、わざわざ内地から食材を取り寄せる人もいるとは聞きます。
人種によって違うというよりは、人それぞれですよね。

というわけで、興味なく読み始めた本でしたが、
普段考えもしない内容でしたので、非常に新鮮でした。
またどこの国の料理も、非常に手間のかかるメニューが多いのが印象的でした。
意外なことに、日本食の方が、作るのが簡単だそうです。
確かに、刺身は切って盛るだけだし（技術がいりますが）・・・そうかもしれませんね。
ですが、日本料理も、本当にきちんと作ろうと思ったら、かなりの手間がかかりますよね。
私はやりませんけど。
外国料理も、ひょっとしたらもっと手間を省ける方法があるんじゃないか
それをしないで、手間はかかっても美味しい作り方のほうの料理を
高野さんに出してくれたんじゃないか・・・という気がしました。
仮に私が海外に住んでいて、「あなたの食べている食事について取材をさせて欲しい」
と言われたらどうするか・・・自信がないので断ってしまうかも。
普段自分が食べているものが、日本人みんなが食べているものと思われたら大変です。

この本を読んで強く思ったことは、高野さんの目が常に外国に向いているということでした。
日本にいてすら、日本在住の外国人に興味を持っていらっしゃる。
震災のときにも、外国人のことを気にしてボランティアに出かけていく。
常に軸がぶれずに「外国」に定まっているのです。
「日本人」としてどう行動したらいいのか、が軸にある私のスタンスとは全く逆で
人って本当に面白い、と思いました。

美味しそうなご飯と、それを美味しそうに食べる人たちの写真を見て
お腹が空く本です。
ときどき酔いつぶれる高野さんの描写を読んで、お酒も飲みたくなります。
郷土料理か、いいですね・・・と思いましたが、私にとっての郷土料理って何だ？？
子どもの頃、愛知に住んではいましたが、
関西出身の母の手料理を食べたお陰で割と薄味の味覚に育ち
その後何度か引っ越した私には「郷土料理」というものが、実はありません。
強いて言えば「オフクロの味」を懐かしむのが筋かもしれませんが、
母は切って盛るだけの単純な料理が好きだった・・・！とここまで書いて、
私、移民の子と仲良くなれるかも、と思いました。
彼らにとっては、家で食べるご飯が拠り所ですけれど、
それが住んでいる場所で一般的に食べられているご飯とはまったく違うのです。
オフクロの味はもちろん懐かしの味ではあるでしょうけれど、
それを食べて「故郷へ帰ってきた」という感じがしないという不思議な感覚を
共有できるはずです。
高野さんは、プロフィールを見ると八王子生まれだと書かれていますが
もしかしたら、ものすごく土台がしっかりした方かも、
（長いこと八王子で暮らされたのかも。ご両親も八王子の方かも）
だから移民の食生活になんて興味を持つのかしら・・・となんとなく思いました。