SSブログ

友情 [活字中毒のトモ]


友情 (新潮文庫)

友情 (新潮文庫)

  • 作者: 武者小路 実篤
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1947/12/29
  • メディア: 文庫


林 修先生の特論
「志賀 直哉と太宰 治は女性にもてるけれど、田山 花袋と武者小路 実篤は、もてない」
を検証するシリーズ第 2 弾。
(ちなみに第 1 弾は こちら
このお話、高校生くらいの時に読んだ気がしますが・・・内容を全く覚えていなかったので
再読しました。

主人公の野島は 23 歳の脚本家です。
彼女いない歴 = 年齢の野島は、女性を見るとすぐに結婚を連想してしまう男でした。
そんな彼が、友人の妹である杉子に出会い、恋に落ちます。
勝手に妄想を膨らませ、杉子こそ彼の将来の伴侶と決めつけた野島は
独りで恋心に苦しみます。

ところが、杉子の方は野島のことを全く好きではなく、
最初から野島の親友である大宮のことが好きだったんですね。
大宮は、野島の気持ちを知って、最初は彼の恋を応援していましたが
結局は杉子の押しに負けて、彼女を受け入れてしまいます。

独りで杉子を思って、勝手に妄想を膨らませる野島が、とてもキモイお話でした。
また杉子は大変モテる女性であるようで、野島以外にも
ストーカーまがいの男が杉子に求婚の手紙を書いていたりします。
その内容がまた、独りよがりでたいそう気味の悪いもので
こんな手紙をもらったら、好きな人からもらったのでも、恋はいっぺんに冷めてしまいそうでした。
その他にも、杉子の家族に気に入られようと思って、頻繁に杉子の家を訪ねる男も登場します。
みんな杉子のことが大好きで、絶対に自分の妻にしたいと思っているのですが
どいつもこいつも、みんなキモイ。
求婚者って、もうちょっとまともなやつはいないんだろうか・・・?
こんなに求婚者が変態だらけでは、杉子が大宮に恋して
フランスへ飛んで行ってしまうのも無理はないというか、私が杉子だとしても
同じ結末を選ぶのではないかと思いました。
もっとも杉子は、最初から大宮のことが好きで、他のキモイ男どもは眼中になかったようですが。

本書が発表されたのは 1919 年だそうですが
当時の若い人たちの恋愛事情が、比較的自由そうであったことが興味深かったです。
野島や仲田(杉子のお兄さん)には妹がいて、お互い妹が誰と結婚するのか
心配そうに見守っているのですが、2 人とも「自分で選んだ、好きな人と結婚するのがいい」
と言っていますし、大宮に至っては「自分で人を殺したのなら、責任も取る。
でも人に決められて結婚して、その責任を取れと言われてもね・・・」みたいな発言を
していました。
確か、マッサンがリタ夫人と結婚したのが 1920 年でしたね。
その時代は意外と自由で面白い時代だったのかもしれません。

小説が作者の人生を表している、というか、身を削って小説を書いているとしたら
確かに、武者小路 実篤はもてないというか、今若かったら単なるキモヲタな気がします。
だけどご自身は 2 度も結婚していらっしゃいます。不思議。



nice!(10)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 10

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0