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和解 [活字中毒のトモ]



和解 (新潮文庫)

和解 (新潮文庫)

  • 作者: 志賀 直哉
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1949/12/07
  • メディア: 文庫


志賀 直哉さんの作品をもう少し読んでみたくて、購入しました。
長年お父さんと仲たがいしていた作者が、子供の誕生をきっかけに
仲直りするお話です。

・・・と書いてしまうと、とても単純で、どうにもならないお話なのです。
ここまで自分の私生活を明らかにしてしまう人も、どうかと思うほど
妻や妹、娘の実名は出てくるのに、肝心な自分の名前は仮名にしてしまうところあたり
ちょっと保身に走っているのではないかという印象を持ちました。

なのに、仮名まで使って登場する主人公は、
実に暴君というか、感情のままに行動し、
父の反対を押し切ってまで結婚した細君にすら、
「俺がこんな性格でなかったら、お前とは結婚していなかった」とか言って
喚き散らしています。
・・・どうなの?この人本当にモテる人?私は不思議に思いました。
武者小路 実篤がモテないのはともかくとして、志賀 直哉って本当に大丈夫?

よくよく読んでみれば、ずいぶん昔の時代に立ち合い出産をしているので
面白い夫だったのだろうとは思います。
でも・・・当り散らすことは多いし、義父と夫との間に立って困っている奥さまの様子が
よく分かるので、やっぱりこの人と夫婦を続けるのは難しいと思いました。
後世でモテると言われる人が、この始末
この時代、結婚生活を続けるのは、実はとても難しかったんでしょうか?
少なくとも、私がこの時代に産まれて、志賀 直哉と暮らすとしたら、無理です。
志賀 直哉は、この本の中で、奥さまのことをえらいぞんざいに扱っていらっしゃいますが
私からすると、そのように扱われること自体に納得がいかないというか
「父に反対されても結婚してやった」といわれた日には
離婚してやろうかと思うくらい、奥さまが耐えているのが忍びないと思ったのでした。

それでも本書の終わりの方では、作者は父と和解を果たして感慨深げです。
何をやっているんだか。
長男と父親って、本当に大事にされていたんだというのが
よく分かる本でしたが、私の息子が夫と仲たがいをしていたとして
こんなふうに夫や息子を立てて、仲を取り持とうとするかどうか
・・・私が妻だったら、絶対にそんなことはなかったと思います。
残念・・・というか志賀 直哉さんは、義理のお母さんが良くできた人だったということに
もっと感謝したほうがいいと思いました。

それでも奥さまの出産に立ち会って、
赤ちゃんが生まれたら奥さまにキスをするところを読むと
この人、人と関わるのが好きで、自分のことも好きだとしても
憎めない人だな・・・という印象です。



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