55歳からのハローライフ [活字中毒のトモ]
村上 龍さんの中篇小説が 5 つ掲載されています。
・結婚相談所
・空を飛ぶ夢をもう一度
・キャンピングカー
・ペットロス
・トラベルヘルパー
主人公はみな、人生の折り返し地点を過ぎた「普通の人」ですが
配偶者と離婚したり、早期退職したり、リストラに遭ったりで、
何がしか人生の先行きが不安定です。でも必死に生きている。
そしてお話には必ず、決まった飲みものが存在し、彼らとその周りの人を元気づけます。
アールグレイ紅茶だったり、プーアル茶だったり、コーヒーだったり。
それらを飲んで気分を落ち着かせたり、人を慰めようと飲みものを勧めるシーンが良く出てきます。
そして飲みものを口にするシーンでは、確かにかすかな希望を感じるのですが
だからといって主人公が幸せになれるかと言われると、そういうわけでもなく
なんというか、最終的にはみんな、迷いが吹っ切れて
自分の人生を受け入れて、生きてくように読み取れました。
何かを打開して、幸せをつかむというお話は 1 つもありません。
今の状況を変えようと思って頑張ってみたけれど、やっぱりやめたとか
今の状況はとてもつらくて苦しいけれど、もっとひどい状況を見たり
自分の心が浄化されるような、いわゆる「人の役に立つ」経験を経て
もうひと踏ん張りしてみようと思い直すとか、そんな話ばかりです。
でも、主人公はとりあえず、ラストで自分の境遇を受け入れています。
・・・人生ってこんなもの?
読んでも、ぜんぜん癒されません。励みにもなりません。
読んで押し寄せるのは「明日はわが身」という暗い気持ちだけです。
なのに読みやすくて、あっという間に読み切ってしまいました。
とりあえず、お茶でも淹れて一息つきましょうか・・・。
タグ:55歳からのハローライフ 村上 龍
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