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FUTON [活字中毒のトモ]


FUTON (講談社文庫)

FUTON (講談社文庫)

  • 作者: 中島 京子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/04/13
  • メディア: 文庫


のろのろ歩け」が良かったので、中島 京子さんの作品を続けて読んでみることにしました。
こちらは彼女のデビュー作だそうです。

FUTON というタイトルですが、田山 花袋の「蒲団」が題材となっています。
ただし、お話の中で花袋に興味を持ち、研究を続けているのは
アメリカ人のデイブ・マッコーリー教授。そして彼は教え子の日系人エミと付き合っています。
ところが、日本から来た留学生コンドウ・ユウキのカンバセーション・パートナーとなったエミは
ユウキとも関係を持ち、彼と一緒に日本へ行ってしまうのでした。
ちょうど日本での学会で発表をしてほしいという依頼があり、
デイブはそれを口実に日本へやってきて、エミを探そうとします。

このお話は、花袋の「蒲団」と見事にシンクロしていて
デイブはアメリカ版竹中 時雄であり、エミが芳子、ユウキが田中に似ています。
(ただしデイブは妻帯者ではありませんが)
ですがお話の終わり方は全く違い、本書の方が清々しいです。

またデイブの書く「蒲団の打ち直し」というお話は、なんと竹中 時雄の妻が主人公と言うか
原作では名前すら出てこなかった奥さんが、美穂という名前で登場し
妻目線で見ると、時雄と芳子、田中がどのように見えていたかとか
妻の当時の複雑な気持ちなどが、細かく描写されています。
蒲団」は竹中 時雄が主人公で、
奥さんは時雄の八つ当たりの対象でしかなかったので
彼女に感情を持たせたこの作品を読んで、何となく、知りたかったことが知れたと思ったというか
蒲団」では奥さんがコケにされている場面しかなかったので
彼女が意志を持って、時雄や芳子と向き合っているのを読むのが面白かったです。
彼女の境遇的には「蒲団」だろうと「FUTON」だろうと、全く変わっていませんが。




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