SSブログ

中国4.0 暴発する中華帝国 [活字中毒のトモ]


中国4.0 暴発する中華帝国 (文春新書)

中国4.0 暴発する中華帝国 (文春新書)

  • 作者: エドワード ルトワック
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/03/18
  • メディア: 単行本


メルマガ「ロシア政治経済ジャーナル」で、発行者の北野さんが
何度か紹介されていらっしゃる本です。
この本の作者はエドワード・ルトワックさんということになっていますが
実際は訳者の奥山 真司さんがルトワックさんに英語で 6 回のインタビューをして
それを日本語に訳してまとめた本です。
だから日本語訳がとても分かりやすい。
読むと、もともと日本語で書かれていたかのような印象を受けます。
日本語でこれだけルトワックさんのメッセージを読めるのは、かなり貴重です。

ルトワックさんは中国の対外戦略を分析するにあたり、
2000 年から中国がとってきた戦略を、次の 3 つに分けています。

中国 1.0(2000~2008)
中国が本格的に経済発展し、世界に台頭してきましたが
このころの中国はまだまだ「平和的」で
どの国も、中国経済の台頭を恐れたり、反発したりする必要はない
なぜなら中国の台頭は完全に平和的なものであり、
また既存の権力構造を変化させず、国際的なルールにも従うからだ
というメッセージが込められていました。
そして、それまでは平気で著作権を無視して海賊版を作っていた中国が
少なくともルトワックさんの出版物に対しては、
中国語訳のリリースに向けて中国側から交渉を持ち掛け、
出版後には印税も払ってくれるようになったそうです。

中国 2.0(2009~2014秋)
リーマン・ショックが起こり、中国が、自分たちが経済力で世界一になるのに
「あと 10 年しかかからない」と思い込んでしまった時代だそうです。
(それまではあと 25 年かかると思っていたらしい)
これにより、中国は 3 つの大きな間違いを犯しました。
1 つ目は、経済力と国力の関係を見誤ったこと
2 つ目は経済の「線的な予測」を信じすぎたこと
3 つ目は大国という立場になっても、他国との二国間関係を持てると思ったこと
だそうです。

中国 3.0(2014冬~2016)
中国 2.0 ではどの国に対しても攻撃的であった中国ですが
最近は国を選ぶようになりました。
つまり、抵抗のない国には攻撃的に出て、抵抗があれば止めるという
当たり前の行動をとるようになったのです(これ、戦略か?)
またアメリカとの G2 達成に向けて道筋をつけようとしましたが
完全に失敗してしまいました。

では次の中国 4.0 ではどのような戦略がとられるかというと
これがハッキリとは語られていないのです。
「可能性がないわけではない」と言葉を濁しながら、
いくつかありそうな未来が書かれていますが、そのうちの一つ
「習近平が態度を改める」とかは・・・ないんじゃないかな。

ただ、日本に対しては「アメリカとの関係を一番大事にしながら
ロシアとも適度に仲良く、その他の国とも連携を取るべき。
中国が尖閣に上陸するようなことがあったら、アメリカにお伺いを立てるような
悠長なことはしないで、即刻武力をもってして追い払うべき」
とかなり具体的なアドバイスをくれています。

個人的に一番面白いと思ったのは、
最終章の「ルトワック戦略論のキーワード」で、訳者の奥山さんが
ルトワックさんとのインタビューの補足説明を行っている章です。
奥山さんご自身も戦略学博士でいらっしゃるので、
ルトワックさんから発信されたメッセージの解釈が非常に的確で
全面的に支持するスタンスではなく、
ルトワックさんの背景を鑑みて彼の言葉の真意を探る、
一歩引いたところから見ている感がとても好きです。

国際戦略の本を読んで、こんなに面白いと思ったのは久しぶりでした。
分かりやすい文章ですし、新書でページ数もそれほど多くないので、
読了は苦ではありません。学生にもお薦めです。



中国4.0 暴発する中華帝国 (文春新書)

中国4.0 暴発する中華帝国 (文春新書)

  • 作者: エドワード ルトワック
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/03/18
  • メディア: 単行本



コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0