婿どの相逢席 [活字中毒のトモ]
沖縄タイムスの書評を読んで、Amazon で試し読みしたところ、
面白かったので続きをすぐに読みたくなり、Kindle 版を購入しました。
もともと新聞の連載小説だったようです。
小さな楊枝屋の四男坊・鈴之助は、大店の仕出屋「逢見屋」の若女将である
お千瀬と相思相愛となり、逢見屋に婿入りしました。
逆玉だと喜んでいられたのもほんの 1 日、祝言の翌朝には
とんでもない事実が発覚します。
なんと、逢見屋は数代前から女が家を継ぎ、女将として店を差配しているので
男は何もしなくていい、ただ健康な女の子を授けてくれさえすれば
遊んでいていいから、店のことに口出しをするな、というのです。
さらに面と向かって、鈴之助を婿に迎えたのは、これといった取柄や才能もなく
平凡な男だからこそ、逢見屋の婿としてふさわしいと思ったからだ、と
大女将から面と向かって思い切りディスられたのでした。
こんなこと言われたら、卑屈になってしまいそうですが
そこは四男坊だったからか、鈴之助はおおらかで怒ることのない性格で
平凡な人柄だからこそ、鈴之助に悩みを打ち明ける人は多く
道に迷った人は、鈴之助を呼び止めて道を尋ねるのでした。
これはかなりの才能ですよね。妻となったお千瀬は、この才能を高く買っていました。
そして鈴之助に言ったのです。
「人の気持ちを和らげて、その懐にするりと入っていくその才を使って
私と一緒に古くからの慣習と戦ってほしい」と。
そうは言われても、お千瀬はこのことを、結婚するまで黙っていたわけなので
私が当人だったら「詐欺だ!!」と叫ぶと思います。
そうせずに、少しずつ逢見屋での居場所を探していく鈴之助は
なんとも人間のできた人です。
そして、お千瀬が望んだとおり、鈴之助は少しずつ周りの人の悩みを聞いて
さりげない方法で解決していき、人の心をつかんでいくのです。
また仕出屋さんが舞台だけに、おいしそうな料理が数々出てきます。
読んでいる途中で和食が食べたくなります。
そして食べるよりも前に、続きがとても気になるので
時間を忘れて読みふけりました。こんな小説、久しぶりです。
続編、出ないかしら。期待しています。
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