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実力も運のうち 能力主義は正義か? [活字中毒のトモ]


実力も運のうち 能力主義は正義か?

実力も運のうち 能力主義は正義か?

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2021/04/14
  • メディア: Kindle版


久しぶりにサンデル教授の著書を読みました。面白かったけれど、長かったです。

ハーバード大学で教鞭をとるサンデル教授いわく
「昔は階級によってチャンスが制限されていましたが
今は自らの才能と努力によって誰でも成功を勝ち取れると言われている
・・・のですが、それは間違い」だそうです。

自らの才能と努力によって成功した(と思いこんだ)人々は
彼らの成功は彼ら自身の手柄であり、彼らの美徳の尺度だと考えるようになり
彼らよりも運に恵まれていない人々を見下すようになりますが
成功者は自分が裕福な家庭に生まれたり、奨学金を得たりして
良い大学に通えたという「幸運」に気づいていないと言います。
また成功した人たちは、宝くじに当たるのと同じように、
自分がたまたま持っている才能を高く評価してくれる社会に暮らしているだけで
自分の手柄だとは言えない。運がいいかどうかの問題。
成功したのは決して自分だけの手柄ではないのだから、
運命の偶然性を実感すして、謙虚にならなくてはいけないと。

能力主義(メリトクラシー)の時代を生き抜くエリートは、数十年にわたり、
懸命に働きルールに従って行動する人々は、その才能の許す限り出世できると
呪文のように唱えてきましたが、彼らは気づきませんでした。
底辺から浮かび上がれなかったり、沈まないようもがいている人々にとって、
出世のレトリックは将来を約束するどころか、
自分たちのプライドをずたずたにするものであり
大学の学位は持たないけれど、
まともな職について人並みの暮らしをしたいと願う人たちを無視していることに。

そのせいで、アメリカの労働者階級の人々は、長い間苦しめられてきました。
最終学歴が高卒であるアメリカ人のうち、
2017 年に雇用されていたのは 68%に過ぎないそうです。
また自殺者の大部分は、学士号を持たない人々であるとも書いてありました。
では労働者階級の人たちが行う仕事は不要なものでしょうか?
「いや、必要だよね」とサンデル教授は言います。
必要な職業なのに、その職業についたら生活が立ちいかない世の中が間違っている
失業の痛みは、たんに失職により収入を絶たれることではなく、
共通善に貢献する機会を奪われることだ。
有権者が欲しがっているのは、より大きな貢献的主義、
つまり他人が必要と信じるものを作り出すことに伴う、
社会的な承認と評価を得る機会なのだと。

アメリカ人の多くは能力主義を嫌悪し、
そのことがトランプ大統領を誕生する一因となったそうです。
ただし、今のアメリカに必要なのは、自由貿易の無制限に推進ではなく、
労働者が、安定した家族とコミュニティを支えるのに十分な給与を得られる職に
就けるようにする政策だとのことでした。
つまりトランプ大統領は、労働者が本当に望んでいることを
やってくれるわけではなさそうです。でも選んじゃうくらい、
みんな能力主義に嫌気がさしていたと。そうかもしれませんね。

私は階級社会でも能力主義社会でもあまり恩恵を受けない
残念な部類に入ります。
もっと労働の尊厳が傷つかない社会が誕生したら
喜んで労働しようと思うかしら。ちょっと想像がつきません。



実力も運のうち 能力主義は正義か?

実力も運のうち 能力主義は正義か?

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2021/04/14
  • メディア: Kindle版



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推し、燃ゆ [活字中毒のトモ]


推し、燃ゆ

推し、燃ゆ

  • 作者: 宇佐見りん
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2020/09/10
  • メディア: Kindle版


娘が「もう読み終わったから」と言って、くれました。
体よく断捨離に使われた感。

主人公あかりは高校 2 年生。アイドルグループ「まざま座」に所属する
上野 真幸の大ファンで、彼を「推し」と称してブログを綴り
彼のグッズを大量に買い、コンサートへ行くために、
得意でもない接客業のバイトをしています。
そんなある日、推しが炎上しました。ファンを殴ったそうです。

最終的には推しはこれが原因で芸能界を引退してしまいます。
あかりいわく「推しのいない人生は余生」だそうです。

私にとって、そのあたりは割とどうでもいいことでした。
何が気になったかって、あかりのできそこないっぷりです。
彼女は、推しを応援する以外のことは何もできません。
勉強もダメ、スポーツもダメ・・・というよりその次元を超えて
生きていくのが大変そうな人です。
バイトもまともにできない、部屋の片付けもダメ。
実社会で生きていたら「発達障害」と判定されそうな人です。
普通にできのいい姉は「あかりは何もできないのに許されてずるい」と怒り
父母は「高校を中退したんだから、働いて自活するように」と脅す。
あかりが普通の人たちと一緒に暮らす様子がとても大変そうです。

だけど、推しのコンサートには行けるのに、高校は中退するとか
片づけはできないのに、推しに関するデータだけは丁寧に拾って管理できるとかは
常人には理解できないと思います。一緒にいるとイライラするのも分かります。
イライラする理由が、あかりができないことではなく
頑張ってできている自分に何も良いことがないから、というのもすごく分かります。
だけどマイケル・サンデル教授の「実力も運のうち 能力主義は正義か?
には、「能力や公益について道徳的に視野の狭い考え方をしたせいで、
民主主義社会はいくつかの点で弱体化してきた」と書いてあったので
こういう考え方はもうじき廃れていくと思います。
みんなが納得して幸せに暮らせるようになるんじゃないかな。
片づけができなくたって、いいじゃないか。なあ。

はやく「実力も運のうち 能力主義は正義か?」を読んでしまおうと思います。
推し、燃ゆ」を読めば読むほど、結論が気になって仕方がなくなってきました。



推し、燃ゆ

推し、燃ゆ

  • 作者: 宇佐見りん
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2020/09/10
  • メディア: Kindle版




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図で考える、シンプルになる。 [活字中毒のトモ]


図で考える。シンプルになる。

図で考える。シンプルになる。

  • 作者: 櫻田潤
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2017/10/20
  • メディア: Kindle版


インフォメーション・デザイナーである、櫻田 潤さんの著書。
職場の同僚に勧められて読んでみました。

言葉だけだと違いがはっきりしなかったり、
意図せず衝突してしまったりする可能性が高いですが
目に見える図を使ってワンクッション置くと、冷静になれて、議論がスムーズに進みます。
「伝わる図」を作るためには、表現テクニックに走る前に、
「自分自身が納得し、理解できる図」を作る必要があるので
そのためには、頭の中を整理整頓し、ものごとをシンプルに考えるようにしたい。
そうするために必要な道具と使い方をまとめたのが本書だそうです。
つまり、図はプレゼンツールである前に、思考ツールであると。
そして、図を書くのだけれども、簡単な線図を使うので
絵心やテクニックはいらないのだそうです。本当に!?
図を書くのが上手な人や、プレゼン資料をきれいに作る人って
絶対ある種の才能の持ち主で、私はそれを身につけることができないと
思っていましたが・・・違うの?と半信半疑で読み始めました。

本書によると、以下の 7 つの図を使えば、
思考を磨き、ものごとを伝えるのに便利だそうです。

1. 交換の図
2. ツリーの図
3. 深掘りの図
4. 比較の図
5. 段取りの図
6. 重なりの図
7. ピラミッドの図

これらの図を頭の中にインストールすることによって、
意識せずとも仕事で使えるようになるのだとか。
ただし、この作業、本書を読んだらすぐ身につくというわけではなく
繰り返し意識して、図を使っていかないとダメなんだとか。
ま、そうですよね。

本書にも、練習問題がたくさん出てきます。
真面目に取り組むと、結構時間がかかります。
私の場合、仕事の合間にちょっとずつ読んで、課題にも取り組んだので
読了にかなり時間がかかりました。
それでも、7 つの図を上手に使いこなせるようになったかというと謎で
まだまだ実践が足りないな・・・という印象です。先は長そう。
あと、本書を読んだからといって、プレゼン資料が飛躍的に美しくなることは
ないと思います。分かりやすい図を提示できる能力と、美しい資料をつくれるセンスは
たぶん別物ですね。前者はものごとを伝えるために必要最低限なスキルで
後者はプラスαのスキルなのかなと。
躍動感あふれる色鮮やかな資料作りはあきらめることにして
とりあえず、シンプルな図で分かりやすく伝えられるようになるべく
日々トレーニングに励もうと思いました。



図で考える。シンプルになる。

図で考える。シンプルになる。

  • 作者: 櫻田潤
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2017/10/20
  • メディア: Kindle版



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