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Memoirs of a Geisha [活字中毒のトモ]


Memoirs of a Geisha (Vintage International)

Memoirs of a Geisha (Vintage International)

  • 作者: Arthur Golden
  • 出版社/メーカー: Vintage
  • 発売日: 2005/11/22
  • メディア: マスマーケット


もうずいぶん前のことになりますが、妹が海外出張に行った際に、
おみやげに SAYURI の海賊版 DVD をくれました。

これが、ひどい製品で、
どこかの映画館で隠し撮りされたらしく、画像が全体的に暗いし、画質も悪い。
声も遠くからしか聞こえないので、台詞がところどころ聞こえない。
しかも、英語の字幕がついているのですが、その内容がところどころ怪しい。
台詞とは明らかに違う単語が、字幕を飾っていました。
観終わった後、なんのことやらさっぱり分かりませんでした。

「なんじゃこりゃ?製作者はいったい何がしたかったんやろ??」

あの映画は、日本をモデルにした、どこか架空の国が舞台の
変なファンタジーなんでしょうか?
しかも、話を端折ってあって、つながりがとても悪い感じがしました。

・・・という訳で、DVD を見ても意味が分からなかったので
原作を購入してみました。
ついでに、この本の日本語訳がまた見事だということを、ネットの記事で読んだので
日本語版の書籍も購入しました。
画質の悪い DVD のお陰で、散財してる気が。
海賊版なんて観ると、ロクなことないですね。

・・・と、ここまでが数年前の話。

それから数年間、本を寝かせ続けていて
ようやく最近になって読了できました。

物語は、主人公がニューヨーク在住の元芸者に彼女の半生を語ってもらい、
それを記録した、という設定となっています。
鎧戸という漁村で生まれた坂本 千代は、
9 歳の頃に姉と一緒に人買いに売られ、祇園へやってきます。
ある日いきなり自分の人生が変わったことに驚く千代は
芸者になる人生を受け入れられないまま、翻弄されていきます。
そんな人生に一寸の光がさしたのが、岩村電機の会長さんとの運命的な出会いでした。

さて、原作を読んでみると、ストーリーは映画よりも重厚で、読み応えがありました。
ですが、アーサー・ゴールデンなる人は、どうしてこんな本を書こうと思ったんでしょうか?
不思議に思って、Wikipedia で 彼のページ を読んでみたのですが
ハーバード大学で日本美術を専攻、コロンビア大学博士課程で日本史を専攻し
日本で働いた経験がある・・・くらいの情報しか分かりませんでした。
何故、彼は芸者の話なんか、英語で書こうと思ったんでしょうか?
私は間違っても、「沖縄のお座敷芸者」を主人公にして本を書きたいとか思わないので
ゴールデンさんの勇気やら、動機の強さやらに驚いています。

日本語訳の本を読んでみると、はんなりとした京言葉がたくさん出てきて
「ああ、日本だなあ」と思うのですが
英語で読むと、どうも登場人物の台詞のイメージが京言葉では想像できなくて
入ってくる台詞がかなりストレートに頭に響きます。
舞台が、日本ではない、どこか別の国に思えてきます。
ですが、着物を着るときに使う小物の名前とか、日本独自の風物などが
きちんとローマ字で書かれて、それなりに説明もされているので
別の国に思えるとしたら、これは、私の英語力の問題かもしれません。

イメージの不思議さはともかく、映画よりうんと、描写が細かくて、
DVD を観て意味不明だったことが、スッキリと理解できました。
初桃の悲しい顛末とか
佐藤次官と延さんの仕事上の微妙な駆け引きとか

「ああ、こういうふうにつながっていたんだ」

と思うところばかりで、楽しんで読めました。

それに、登場人物それぞれの感情が豊かなこと。
作者は男性だしアメリカ人なのに
どうしてこんなに芸者の心情を細やかに描けたんでしょうか?
リサーチがよっぽど申し分ないものだったのかも。
(後書きに、実際に祇園の花形芸者だった方(岩崎 峰子さん)などから話を聞き
たくさんアドバイスをもらった、と書いてありました)

佐酉理(漢字で書くと SAYURI ってこういう字だそうです)が男爵に着物を脱がされるシーンとか
蟹の先生との水揚げシーンとか
佐藤次官との投げやりなセックスシーンとか
(そういうシーンばっかりだな)
かなり細かく描写されていて、読んでいるこちらがドキドキしました。
それと、好きでもない人とセックスするときの佐酉理の投げやりな気持ちも
実に細かく書かれていて、
作者は女性でもないのに、こんなこと良く分かるな、どうして書けたんだろう?
とても不思議でした。

これで、内容はしっかり理解できたので
次は日本語訳を読んで、日本語と京都の美しさに浸りたいと思います。


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