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「無理」の構造 ―この世の理不尽さを可視化する [活字中毒のトモ]


「無理」の構造 ―この世の理不尽さを可視化する

「無理」の構造 ―この世の理不尽さを可視化する

  • 出版社/メーカー: dZERO
  • 発売日: 2019/03/28
  • メディア: Kindle版


本年もどうぞよろしくお願いいたします。

2020 年最初の 1 冊はこちら。
Kindle Unlimited でダウンロードして読みました。

著者はビジネスコンサルタントにして著述家の細谷 功さん。
世の中にあふれる「理不尽なこと」のメカニズムを可視化するための本です。
「世の中は理不尽だ」と感じる出来事の多くは
出来事そのものが理不尽なのではない、お前の頭の中が理不尽なんだよ
というのが本書の主旨です。

そう、理不尽なのは、同じものを見ても、人によって見え方が違うから。

世の中を変える人と動かしている人
「見えている」人と「見えていない」人
発信している人と受信している人
「プレイヤー」と「観客」
本当に自分で目利きができる少数の人と、それに同調するだけの多数の人

通常、善の反対語は悪、悲観の反対語は楽観であると言われています。
でもそれらは本当に対と言えるのでしょうか?
細谷さんの意見は「否」です。細谷さんいわく
これらの対を紙の右と左に書いて、ぱたんと折りたためば
これらは紙一重で重なり、それまで中立点だった「どちらでもない」部分が対極にくる
つまり善の反対語は悪ではなく「どちらでもない」なのだと。

また時間というのは不可逆性があるので、変化は対称ではないそうです。
お湯はほおっておけば冷めることはあっても、自然に熱くなることはない
それと同じような不可逆性が、人間の社会や気持ちにも存在するそうです。
また流れに逆らうには多大なエネルギーがいるので、
自然に変化の方向は一方通行なのだと。
社会が成熟すればするほど、没個性化や民主化、性悪説ベースの考え方が進み
それらを解決するには「別のものを新しく立ち上げる」しかないとのことです。

時間だけでなく、物質の量についても同じことが言え
ものを増やすのは簡単だが、減らすのは難しいのだそうです。
確かに、我が家はモノであふれています。
決して余計なものを買っているつもりはないのですけれど。
モノは増えるけれど、お金はなかなか増えないので
増えないものもあるんじゃ・・・と思ったのですが
お金とモノとは用途が別なので、そこは仕方がないのかもしれません。
お金をモノやサービスに変えているわけですから
お金を増やそうと思ったら、
モノやサービスに興味を持たないようにする必要があります。

さらには、自分と他人の関係性は、対象ではなく非対称である
ゆえに「公平」とか「対等」という関係性は幻想にすぎない
どんな分野にも「わかっている人」と「わかっていない人」が存在し
「わかっていない人」はさらに下記の 2 つに分けることができる
わかっていないことをわかっている人
わかっていないことがわかっていない人

わかっていない人、つまりものごとが見えていない人は
なにも見えないから根拠のない自信を持っているし、
「自分に見えている世界」が世界の中心であり、それが正しいという信念に揺るぎがない
だからわかっている人がいくら説明しても、労力の無駄で
この二者が議論をするとストレスばかりがたまる、つまり理不尽な気持ちしか残らない
「他人を変えよう」とか「気づかせよう」という労力はすべて「無理」な取り組みである。
というのが、本書の主旨だと思います。合ってますかね?

非常に興味深い本でした。
分かり合えない人たちとも、それなりに理解しあえるように
工夫して意思疎通を図ろうとするのは、労力の無駄であることが多いなんて。
ただ自分が「わかっていないことがわかっていない人」になるのは嫌なので
せめて、ものごとには常に自分が分かっていない何かがあるに違いないと思って
多方面から物事探りたいと思いました。

場面に応じてそれがプラスになるかマイナスになるかが決まってくるので
前提条件を無視して成功体験をそのまま自分に当てはめるのは危険だという意見も
参考になりました。この話、以前別の本でも読んだ気がします。
どの本だったかな・・・。


「無理」の構造 ―この世の理不尽さを可視化する

「無理」の構造 ―この世の理不尽さを可視化する

  • 作者: 細谷 功
  • 出版社/メーカー: dZERO
  • 発売日: 2016/02/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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